期末保有資産が対象に
減価償却費の規定について、「内国法人の減価償却資産につき」が「内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につき」と改正されたのは平成13年です。所得税法も同じです。これを、素直に読むと、期末に存在しない資産については減価償却できない、ということになります。
平成13年は組織再編税制が導入された年で、法人税法には、適格分割等による資産移転が期中にあるときには2ヶ月以内の税務署への届け出を要件に「期中損金経理」により償却計算をしてもよいとの規定も置かれました。期中損金経理で償却費の計上が許されるのは適格分割等の場合に限られるのです。
解釈通達での解釈の仕方
この改正の直後、所得税の通達で「年の中途で譲渡した減価償却資産の償却費の額については譲渡所得の取得費に含めないで不動産所得等の必要経費に算入しても差し支えない」としました。
法人税でも当時、期中譲渡資産に係る圧縮記帳では譲渡時点までの償却費の計上をしても差し支えない、との情報を質疑応答事例として公開しました。
また、グループ法人税制についての平成22年10月6日付公開情報でも、譲渡損益調整資産についての譲渡時点までの「期中償却額」は損金算入となり、譲渡損益調整資産の帳簿価額1,000万円の判定も期中償却額控除後による、としています。
通達等解釈の趣旨
法人税法上、「期中損金経理」を許されているのは、適格の分割・現物出資・現物分配の場合で、それ以外については「期中損金経理」の適用はありません。しかし、公開情報の文脈では、「期中損金経理」の適用外では、「期中償却」は当然の如く許される、ということのようです。
ここからわかるのは、適格分割等に係る「期中損金経理」の規定は、償却を可能にする有利規定なのではなく、2ヶ月以内の届け出をしない限り償却を認めない、という制限規定だと、ということです。
通達は解釈しているだけ
国税庁は「通達」を法令解釈通達と、公開情報も法令解釈情報と表記しています。解釈なのですから、条文には解釈の通りのことが書かれているはずです。しかし、素直に読むだけでは反対の解釈になってしまう減価償却の条文は、多分税法中、最も解釈の難しい規定です。