損害賠償金非課税の様相

昭和40 年代の事ですが、水俣病補償に係る和解金及び予防接種事故に係る給付金について非課税の取り扱いが公表されました。

予防接種で被害にあう
予防接種は文字通り病気から人体を予防するために行うものですが、中には予防接種により罹病したり死亡したりすることもあります。しかも当時は、予防接種が強制されていたものでした。

その被害者への損害賠償金としての給付金について
『所得税・相続税の課税はないはずですね』との照会が東京都及び厚生省から国税庁に
なされました。これに対し『その通りの取り扱いにします。』との回答をしています。

水俣病補償でも同じ
水俣病補償に係るチッソ㈱との和解契約に基づく補償金について『所得税・相続税の非課税取り扱いを確認したい。』との厚生省から国税庁への照会に対し『貴見の通り取り扱います。』と、回答しています。

照会のポイント
遺族にとって損害賠償金が相続財産にならないようにするために『死亡患者に関する補償金には、遺族固有の慰謝料が含まれること、遺族はその和解契約の当事者になることなどから、相続税法の適用を受けず、その補償金について相続税も課せられないものと解したい。』と、照会文は主張しています。

一部に非課税の慰謝料があるのだから、全部非課税にするべきとの論理ですが、これがまかり通ったわけです。すこしだけ留保条件をつけた非課税損害賠償金についての相続税の課税実務では、遺族固有の請求権に基づくものとして相続財産とはしないとしていますが、被害者の「財産的損害」に対する損害賠償金部分は課税するとしています。

予防接種の例や水俣病の例ではそのような条件を付けていませんので、ここでいう財産的損害とは、例えば、交通事故で死亡事故になったときの被害車両の補償代金などは、相続財産としての車両に代えて相続財産に含める、との意と解されます。ここだけは課税のバランスをとろうとしています。